◆邪気臓腑病形篇
【原文】
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黄帝曰.請問脉之緩急小大滑濇之病形何如.
岐伯曰.
臣請言五藏之病變也.
心脉急甚者.爲瘛瘲.微急.爲心痛引背.食不下.
緩甚.爲狂笑.微緩.爲伏梁在心下.上下行.時唾血.
大甚.爲喉吤.微大.爲心痺引背.善涙出.
小甚.爲善噦.微小.爲消癉.
滑甚.爲善渇.微滑.爲心疝引臍.小腹鳴.
濇甚.爲瘖.微濇.爲血溢.維厥.耳鳴.顛疾.
肺脉急甚.爲癲疾.微急.爲肺寒熱.怠惰.欬唾血.引腰背胸.若鼻息肉不通.
緩甚.爲多汗.微緩.爲痿瘻.偏風頭以下汗出不可止.
大甚.爲脛腫.微大.爲肺痺引胸背.起惡日光.
小甚.爲泄.微小.爲消癉.
滑甚.爲息賁上氣.微滑.爲上下出血.
濇甚.爲嘔血.微濇.爲鼠瘻在頚支腋之間.下不勝其上.其應善痠矣.
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【要約と解説】
「黄帝内経霊枢」は「針経」とも言われている。
素問とともに現存する世界最古の医学書である。
素問が基礎理論が記述されているとすると、霊枢では実践的、技術的なことが記述されている。
ここでは、邪気が臓腑を病ませたときの病の形について書かれている。
四季の気にあてられた時の病や、風・寒・湿・暑の邪気が侵入する状況など。
上記の部分では、黄帝が先生である岐伯にこのように尋ねている。
「脈の緩急・大小・滑濇は各々どのような病の症状となってあらわれるか?」
岐伯が答える。
恐れながら、5つの臟の病変に分けて申し上げます。(上記は心脈と肺脈の蕪蕪を抜粋)
心脈から。
ひどく急の者は、手足がひきつる痙攣の病。(瘛瘲)
やや急の者は、心臓が背中に引きつられるような痛みが足、食べ物がのどを通らない。
ひどく緩の者は神気が散って気遣い笑いをする。
やや緩の者は、みぞおちに血気の鬱滞があり、これが上下に動く。時に唾に血が混じる。(伏梁)
ひどく大の者は、のどの奥に何か引っかかっている感じがする。(喉吤)
やや大の者は、心気がめぐらず、そのために心臓が背中にひきつけられる感じがする。よく涙が出る。(心痺)
ひどく小の者は、よくしゃっくりが出る。(噦)
やや小の者は、胃熱を生じて食欲の異常亢進がみられる。(消疸)
ひどく滑の者は、よくのどが渇く。
やや滑の者は、胸が痛んで臍まで響き、下腹が鳴る。
ひどく渋の者は、声が出なくなる。
やや渋の者は、血があふれて出血しやすい病、手足が冷えてふらふらする病(維厥)、耳鳴りが起こる病、
癲癇のような病を起こす。
肺脈について。
ひどく急な者は、癲癇のような発作を起こす病。
少し急の者は、悪寒発熱があって体がだるく、咳をするごとに血痰を吐き、咳の痛みが腰や背中、胸まで響く。
そうでないときは鼻の中に肉の塊ができて鼻がつまって通らない病。
ひどく緩の者は、汗がたくさん出る。
少し緩な者は、手足が萎えて、血膿の出る腫れものがある病か、あるいは半身不随の病。これらは首から下に汗をかいてやまない。
ひどく大の者は、すねが腫れる。
やや大の者は、肺気がめぐらず、胸と背中がひきつけられたように痛む病で、いつも眠たがり、日光に当たるのを嫌う。
ひどく小の者は下痢する。
やや小の者は、食欲が異常亢進する。
ひどく滑の者は、ぜんそくのように咳がこみ上げる。
やや滑の者は、身体の上下の穴から出血している。
ひどく渋の者は、血を吐いている。
やや渋の者は、首と脇の下にできものができ、上半身を支えるのが苦しく、痛みを感じる。
参考:築地書館『意釈黄帝内経素問』小曽戸丈夫、浜田善利 共著
【私考・愚考】
小曽戸先生の意訳によると、「癲」も「癇」も特に使い分けがなく、どちらも「癲癇発作」とされている。
しかし、私は様々な文献の症状などから「癲」は現代医学でいうところの「統合失調症」に近い病であり、
「癇」がいわゆる「てんかん発作」を刺しているのではないかと考えている。