力のないひきつけ、緩慢なあるいは小さなけいれん(ふるえ)を特徴とするものを東洋医学では「慢驚(まんきょう)」といいます。
突然のひきつけ、けいれんを特徴とする「急驚」とは区別して考えます。
急驚は外側の要因が症状のきっかけとなります。
一方の慢驚は身体が弱っているがために起こります。
つまり、内側の状態が要因となります。
身体が弱っているため、外側の影響(外気の状態、食べ物、環境の変化など)も受けやすくなります。
弱っている体の状態には以下のような種類があります。
①肝腎陰虚(かんじんいんきょ)
突然のひきつけ(急驚)が治らず慢驚に移行する。
あるいは熱の病によって、血(けつ)が不足して鈞を栄養することができなくなる。
また腎陰の不足が肝陰不足を引き起こし、虚風内動して発症する。
□間歇的で力のない筋肉のひきつり
□手足のふるえ
□微熱
□やせ
□いらいら
□不眠
□手のひら、足の裏のほてり
※舌質は紅で乾燥、舌苔は少ない、脈は弦細数。
②脾胃陽虚(ひいようきょ)
激しい嘔吐や下利、気を下げる薬や冷やす薬の過用などで脾の機能(消化器系)が低下したり、
生まれつき脾の機能が虚弱なために肝気が旺盛となり、肝風内動を生じて発症する。
□時にひきつけや目の上方注視が生じる
□薄目を開けてうとうと寝るあるいは昏睡
□手足が冷たい
□顏色が萎黄
□水様便
※舌質は淡、舌苔は白、脈は沈弱。
③脾腎陽虚(ひじんようきょ)
大病、慢性病、調気の嘔吐や下痢、熱病の後などで脾胃の陽気が消耗し、腎陽に及び、腎陽の機能が衰えたために発生する。
□手足のひきつけやふるえ
□元気がない
□昏睡
□顏色が暗い黄色
□泉門の陥凹
□冷や汗
□手足が冷たい
□水様便
□呼吸が弱い
※舌質は淡、舌苔は白、脈は沈微細。
病気や症状の発生はよく戦争にたとえられます。
自軍が強ければ、敵が外から攻めてきても国が影響を受けることはありません。
自軍がいくら強くても、外敵がそれを上回っていれば侵入され、ダメージを受けてしまいます。
自軍が弱くても、敵の方がさらに弱かったら問題ありません。
身体も常にこのような状態にあり、自軍(体の内側)の勢力が強ければ強いほど良いことは言うまでもありません。
現代の日本の病院で行われている医学は、外側からの侵襲によって受けたダメージにはとても強い医学です。
たとえば、ウイルスや細菌などによる感染症や、銃で撃たれたり、刺されたりすることによるケガなどです。
これは歴史的に戦争によって発展してきた医学だからです。
そのため、外側の戦力を小さくすることが主な戦略になり、そこが強みです。
(感染症でいえば、ウイルスや細菌の数を減らしたり、弱らせたりする。)
自軍を強くする手立ては正直ありません。
一方の東洋医学では、
自軍を強くし、外側の影響を受けないようにしつつ、
敵の性質や勢力を見極めそれにも随時対処するという手法です。
もちろん銃創などは現代医学の方が得意ですが、必ず、内側と外側の状態を考えて戦略を立てます。
以前、急驚(突然のけいれん、ひきつけ)の記事を書きましたが、
それも今回取り上げたような内側の問題がベースにあります。
内側の状態を改善していくことが根本療法になります。
症状を繰り返したり、その場限りの対症療法で終わることがなくなるのです。