突然に生じるけいれん・ひきつけのことを東洋医学では「急驚(きゅうきょう)」といいます。
そのほか「急驚風」「驚厥」「抽風」とも呼ばます。
急驚は、外気の状態、食事、精神の動揺など外側の要因によって発生します。
具体的には主に以下の5つの要因が考えられます。
①外感
②暑熱
③痰熱
④食滞
⑤驚恐
それぞれ細かく見ていきます。
①外感
小児は皮膚が脆弱で外の影響を受けやすい状態にあります。
そのため、外邪(がいじゃ)が入り込み、それが熱化して痰を生じます。
その熱痰が肺胃に鬱滞し、火を生じ、体内で火が旺盛になるため、内風を生じることにより発生します。
具体的な症状は以下の通りです。
□ひきつれ
□けいれん
□発熱
□無汗
□頭痛
□せき
□鼻水
□咽頭部の発赤
□(胸に熱があり)手足をばたつかせる(煩躁)
※舌苔は薄白、脈は浮数
②暑熱
身体が弱く、さらに滋養作用の低下している状態の子供が、暑熱を感受し、それが厥陰に入り、神明を内閉することによって発生します。
□意識障害
□けいれん
□高熱
□頭痛
□口渇
□じわっと汗が出る(自汗)
□嘔吐
□首のこわばり
※舌質は紅絳、舌苔は薄黄膩、脈は弦数
③痰熱
哺乳や飮食の不摂生(脂っこいものや甘いものの過食)が深く関係します。
食べ物が滞るとともに、痰を生じ、それが気道、胸膈、胃腸を蘊結することによって発症します。
□突然のひきつけ
□体が熱い
□顔面が赤い
□(胸に熱があり)手足をばたつかせる
□口が乾く
□息が荒い
□ぜーぜーいう
□歯を食いしばる(牙関緊急)
□便秘
□尿が出にくい
※舌質は紅、舌苔は黄で厚、脈は弦滑数
④食滞
痰熱と同じく、哺乳や飮食の不摂生(脂っこいものや甘いものの過食)が深く関係します。
こちらは食べ物が停滞することでそれが熱化し、肝風を引き起こしたために発生します。
□顔が青白い
□ひきつけ
□食欲不振
□嘔吐
□腹が張る
□腹痛
□便秘あるいは酸臭のある下痢
□ぜーぜーいう
※舌苔は垢黄、脈は滑大数
⑤驚恐
小心で元気のない子どもが驚き、恐れることによって神気が乱されて発生します。
たとえば、不意に見慣れないものを見たり、聞きなれないものを聞いたり、うっかり転ぶなどといったことです。
□熱はないか、微熱
□顏色が青い
□手足が冷たい
□驚きやすい
□眠りが浅いあるいは昏睡
□目覚めると泣き叫ぶ
□手足のけいれん
※舌苔が薄白、指紋は青
驚風と類似病証との鑑別
◆癇証(かんしょう;てんかん):発作性で突然意識を失って、手足のけいれんを生じる。口から泡を吹き、大便小便を失禁するが、意識が回復すると、正常に見える。毎日数回あるいは数日に1回発作を起こす。
◆臍風(せいふう):新生児の破傷風で、一般に生後3日から7日以内のものは含まれない。
◆客忤(きゃくご):発作時に発熱や目の上方注視がなく、脈も弦急ではない。
◆虫証(ちゅうしょう):蛔虫による腹痛が主で、両目の凝視、歯を食いしばる、手足が冷たいなどがみられるが、発熱、ひきつけはない。
◆天釣(てんちょう)と内釣(ないちょう):天釣は両目の上方注視が主で、内釣はけいれん性の腹痛と啼泣が特徴。天釣は熱証で陽に属し、内釣は寒証で陰に属し、驚風の特殊型である。
参考文献:中医研究院 趙金鐸主編 神戸中医学研究会編訳 『症状による中医診断と治療 下巻』燎原書店
※癇証(てんかん)が鑑別診断にはいっているため、急驚と癇症は異なります。
しかし、症状として重なる部分も多くあるため、ドラベ症候群を考える上では非常に参考になると考えています。