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癲癇【東洋医学的定義】

 

癲癇【てんかん】

病証名。

①癇病のこと。風眩ともいう。古くは癲、癇の二字は同義。

《病源》巻45「十歳以上を癲となり、十歳以下を癇となす。」

 

②癲証と癇証の合称。癲は精神錯乱の一種の疾病をさし、癇は発作性の精神異常の疾病をさす。

 

 

癲・顚【てん】

①精神病の一種。痰気の鬱結による。

症状は、精神が抑鬱され、表情が漠然とし、あるいはブツブツ一人ごとをいう。

また、泣いたり笑ったり常でなく、幻想幻覚があり、言語錯乱して穢潔もわからず、食欲もなく、舌苔は薄膩、脈弦滑などをあらわす。 

治療は理気解鬱、化痰開竅するに良い。《素問 奇病論》参照。

 

②病気がなおらず、しきりに発すること。

《素問 長刺節論》「病初めて発し、歳に一たび発すれば治せず、月に一たび発すれば治せず、月に四五発するは名づけて癲病という。」

 

 

癇【かん】

病名。

本病は一種の発作性精神異常の疾患である。

また、胎病とも言って、早くも《内経》において遺伝的要素のあることが指摘されている。

古代では、癲と癇の二字を同義に用い、《景岳全書》では癇のことを癲と称している。

《千金要方》では癲癇と称し、俗に羊癇風といい、さらに、10歳以上の患者を癲、10歳以下の患者を癇としている記載がある。

本病は驚恐あるいは精神の失調、飲食の不摂生、過労などにより、肝脾腎の三経を傷つけ、風痰が気にしたがって上逆したために発する。

症状としては、失神して顔面蒼白となり、目を見ひらき、すぐに回復して正常にもどるもの、あるいは突然昏倒して涎沫を吐し、目が吊り上がって歯をくいしばり、手足がひきつるもの。あるいは羊のようなうめき声をあげるものなどがあり、いずれの場合も醒めた後は多少の疲労感を残すだけで、常人と同じになるが、発作は繰り返されることがある。

治療については発作時には豁痰宣竅・熄風定癇の法がよく、平素は脾腎を補うことを主とする。

病因により、驚癇、風癇、食癇などの区別もある。

なおこの他に、《万病回春》などのように、意識の昏乱、狂叫奔走の病証を癇としている書もある。

 

創医会学術部主編『漢方医学大辞典』燎原 より引用

 


このような東洋医学的な定義から、ドラベ症候群は明らかに【癇】であるといえるだろう。

 

なお、「精神異常」などの現在では差別的な言葉とされる表現がみられるが、現代の方々がイメージされるような表現ではないことに理解していただきたい。

「精神」とはもともと東洋医学の言葉である。

せっかくなので、同じ辞典にて精神を引いてみると以下のように書かれている。

 

精神【せいしん】

①人体の霊気。《霊枢 本神篇》「精神魂魄」

②神(しん)の概念である。生命活動の重要な一部分で、五蔵中の心(しん)と最も関係が深い。

ゆえに心は「神を蔵す」という。《霊枢 邪客篇》に「心は五臓六腑の大主なり、精神を舎す所なり」とある。

大主とは臓腑中、心の統率作用をあらわし、舎は寄舎の意味がある。

これにより、精神は神の代表的な表現とみなすことができる。

③精は精液、神は精神のこと。

④人体を主宰し、活力を充満させるものを、外面的に表現したもの。